自営業としてどうやったら社会的に認められるか
ネット上の相談コーナーでたまたま見かけた質問。漠然としていて答えにくい質問だが、自営業の経験者としては、質問者の気持ちがよく分かる。自分もいやだったのは、使っている製品のカスタマーサポートに電話した時の相手の対応だ。例えば私の名前が田中だったとする。田中と名乗ると「どちらの」田中さんでしょう、と仰る。どこの会社に所属しているのかという質問である。田中事務所の田中です、と答えると、かすかに鼻で笑われる音が聞こえたような気がした。今はもう少しマシな対応になっているかと思うが、当時はつくづく、この国は「会社員」前提でできているのだなあ、と思ったし、この環境でどうやってサバイバルしていったものかを考えざるを得なかった。その時のことを思い出しつつ「自営業者が世間に認められる方法」を考えてみた。
メジャーな仕事に関わる
TVで聞いたが、有名なプロデューサーが「映画が当たると関わったスタッフたちの人生が変わる」というようなことを言ったそうだ。全くその通りだと思う。誰しも相手の力量を測るのは難しい。この人に仕事たのんでいいんだろうか、という不安を感じている。だから、もし、メジャーな作品やプロジェクトに参加したことを実績として言えるのであれば、いきなり信用されてしまうようなことは多々ある。自分が開業したばかりの頃、たまたま、電車の中吊り広告になった仕事があり、人の紹介で営業に行った時にその広告を最近の作品として見せることができた。そうすると何人かの人、初対面の人でも、あれ、この広告、見たことありますよ!って感じで急に距離が縮まるのを感じた。だからメジャーなプロジェクト、有名な企業の仕事の場合、実績として使えるので「安くても請けるべし」という考え方もある。
第三者に仕事を紹介してもらえるようになる
日本では、誰かの紹介じゃないと仕事が決まりにくい、という話を聞いたことがある。自分の経験からも裏付けられる話だと思う。LikedInが欧米ほど流行らないのはそれが理由かも知れない。裏を返せば、第三者の紹介があれば、仕事につながりやすい、ということだ。小さな仕事でも、安い仕事でも、一旦引き受けたら、誰かが見てくれている、と思って手を抜かず、良い仕事をすることだ。意外な人の目に止まって、大きな仕事につながった、というのは、なんだかマンガのストーリーのようだが、実際にそういう経験をしたという話を複数の人から聞いたことがある。「奇跡」というほど珍しい話ではない。
横のつながりを作る
依頼者側からすると、横のつながりがある人からは安心感を得られる。「これは私の専門外なので、知り合いを紹介しますよ」と言えると、正直だな、無理に仕事引き受けたりしないプロだね、いろんなルートを持っていそうだから、いろいろ相談させてもらおう、などなど、印象アップは間違いない。
HPを充実させる
SNSでいいじゃん、という人は間違っている。HPは今でも商売の看板であり、履歴書である。発注者側としては契約前にHPのチェックは必須で、私の勤務先では稟議書にHPのURLの記入も通例になっている。すでに有名なタレントでも必ずHPがある。聞くところによるとHPがない(=連絡先がはっきりしない)人をキャスティングするのはTV局ではご法度なのだそうだ。企業と取引するのであれば、HPを作るのは必須だし、どうせ作るのならPR効果のあるもの、信用度を上げるようなものを作るべきだ。
勉強する
ご存知の通り、AIの登場もあり環境の変化は加速している。貪欲に新しい情報を仕入れていく「勉強」をサボることはできない。いつクライアントに質問されても新しい情報にもとづいて答えることができれば、さすがプロだね!ということになる。露骨にアピールしなくても、打ち合わせ時の会話の端々に仕事に対する造詣の深さはにじみ出るし、発注者側にもそれは伝わる。そうしてクライアントからの信頼を得ることができれば、自営業者としての自信が生まれ、世の中から認められている、という実感が湧いてくる。
年間の売上を1,000万円以上にする
小さい会社の場合、社員一人あたりの売上が1,000万円を下回ると、経営が苦しくなる、と昔から言われている。私が自営業になって2年目の売上が700万くらいであった。小さくても事務所がないと仕事がもらいにくい時代だった。ZOOMやシェアオフィスがない時代で、事務所がないと、どこで打ち合わせするの?というような問題もあったためだ。その事務所の家賃(確か13万)も払わなくてはならなかったので、売上700万円というのはかなり厳しかった。ある日、先輩格の人と話していて愚痴をこぼしたら、「え、でも売上、年間1,000万はあるだろ?え?無いの?」「1,000万はないとダメだよ」と説教されてしまった。それ以来、自営業で一人前になるのは、売上1,000万だ、と思っている。1,000万というと、ハードルが高く感じる人もいるかも知れないが、そんなこと言ってられない。大抵の商売では、経費が50%、と言われていた。今はITのおかげでもうちょっと効率が良くなっているかも知れないので、利益率60%で計算してみよう。すると、売上1,000万でも年間の利益は600万。そこから税金や健康保険、年金保険料などで2割くらい持っていかれるから、手取りは480万ということになる。480万円というのは、会社員の平均給与に近い数字だから、収入に関しては「世間並み」という言い方ができるかも知れない。目指そう売上1,000万円!
5年以上頑張る
毎月少額でも積立をするのもいい。月5万で5年間、無事に積み立てを続けられると300万貯まる。通帳を見た時に、金額はともかく、ああ、5年間、無事にやってこれたんだなあ、という感慨があった。自営業として少なくともこの5年は黒字だぞ、という実感があったのを憶えている。
そもそも
個人的な意見だが、そもそも世の中から認めてもらう必要って、あるのか?いま、労働者の9割が被雇用者だと言われている。自営業者は今の日本ではマイノリティなのだ。「自分は一般人じゃない、スペシャルな存在だ」と開き直って堂々としている方が周囲も一目置いてくれるかも知れない。(或いはアホと言われるかも知れないが)それぐらいの自己肯定力がないと自営業はツラいかも知れない。仕事を受注できて、生活できて、納税の義務を果たせば、それは一人前の個人事業主。他人の評価なんか気にしなくて良いのではなかろうか。