法人化するべきか?

自営業の裏

法人化すると法人住民税を取られる。赤字でも払わなければいけない法人の「基本料金」である。その他にも決算や確定申告が大変で、大抵の人は税理士に頼むことになり、毎月顧問料を払うことになる。今はFreeeとか、クラウド系の会計サービスがあるので、自分でもできるかも知れないが、私が自営業者になった頃は、そういう便利なものはなく、会計事務所のお世話になった。では、なぜ、そんな面倒なもの、「法人」になるのか?

お金を借りるため

私が自分の事務所を法人化したのはもう、30年くらい前のことなので、今とは状況が違うかも知れないが、当時は金融機関から事業資金を借りようとしたら法人化しなければ話にならなかった。開業資金というか設備投資の名目で、パソコンと周辺機器などを買うため、300万くらい借りたと記憶している。ただ、会社でお金を借りるといっても、代表者が保証人になる必要がある。会社を潰しても借金は残るので、その点は、個人で借りるのと同じ。最近は政府系金融機関は個人に保証を求めなくなったと聞いたので、昔とは違ってきているようではある。

法人じゃないと仕事を出してくれないクライアントがあるため

これも昔の話なので今は違うかも知れないが、当時は法人じゃないと取引してくれない会社があった。もしかしたら今も消費税の問題があるので、個人とは契約したがらない会社が多いかも知れない。ただし、例外があって、私の知り合いにも一人そういう人がいるのだが、その人はとにかく余人では代えがたい才能の持ち主で、企業の方が内規を改めてまで個人としての彼に仕事を発注しているらしい。並外れた才能があれば、法人化するかどうかなんていうことは、どうでも良いことなのかも知れない。凡人の私としては、そこに選択肢はなかった、というだけのお話。

自己破産したくなかったから

法人じゃないと個人の責任になる

この理由が一番大きかった。当時、写真撮影が含まれる仕事を請け負うことが多かった。その時、心配したのは事故。ロケ先で高価な調度品を壊してしまう、とか、雇ったカメラマンが脚立から転落、とか。あと自分が実際にやらかした失敗で、カタログに使われた画像の一部に合成のミスが見つかり、カタログが刷り直しになったことがあった。幸い印刷の費用は広告代理店がかぶってくれて私の方はかすり傷程度で済んだのだが、冷や汗ものだった。個人として仕事を受けていると、全責任は、個人について回る。50万の仕事でもミスってクライアントに1,000万の損害を与えてしまったら個人として補償を求められる可能性がある。一方、法人化していれば、会社を倒産させることで、出資金は諦めることになるが、責任はそこまでだ。代表者であっても(よほど悪質でなければ話は別だが)夜逃げまでする必要はない。その話を人から聞いて、すぐに法人化を決意したのを覚えている。

10万円の覚悟?

以前は株式会社という形態の他に有限会社という法人形態があって資本金は300万と法律で決まっていた。今は有限会社がなくなった代わりに株式会社より設立が簡単な合同会社というのがある。設立が簡単だからといって、株式会社より格下だということはない。あの巨大企業、アマゾンの日本法人も合同会社だ。合同会社は、資本金1円でも設立可能らしい。現在、私は会社員だが、私の仕事の外注先にも資本金10万円という会社がある。前項で資本金を諦めて会社を倒産させる話をしたが、10万円だったら痛みはないよね。10万円分の覚悟しか無いの?と老人は思ってしまう。取引について承認をもらうための稟議の際も役員(老人)から、「資本金、10万かよ?けっ」と言われた。合法なんだけど、年寄りウケはしない。

損保の企業保険にも入れる

心配性の人は損害保険会社の企業保険に入るのもよい。これも法人でなければ、たぶん入れないと思う。(個人だと、「業務」の範囲を定義するのが難しいんじゃなかろうか)企業保険は会社が業務中におきた事故で賠償責任が生じた場合、カバーしてくれる保険だ。企業保険というと保険料が高そうな気がするがそんなことはない。掛け捨てであることと、会社の売上で保険料が決まるから、個人事業主でも無理なく加入できる。私も数年間、加入したことがあるが、売上が大したことなかったので保険料は年間、5〜6万だったと思う。月5千円で安心が買えるのなら、検討に値するだろう。

迷うのなら後回し

法人化するか否か、迷っているのなら、とりあえず1年くらい個人のままでやってみてもよい。それで必要性を感じたら法人化すれば良いと思う。うまく儲かれば今度は税金対策が必要になるので、税理士などの相談相手から法人化を勧められるようになる。開業して1年目あたりで法人化して周囲に「おかげさまで」と挨拶したり、SNSでちょっと盛って宣伝すると、おー、1周年で法人化か、うまく行っているみたいだな、うちも仕事頼んでみよう、なんて感じで予想外のPR効果もあるかも知れない。こういうのも結構大事だったりする。自営業は自分の広告宣伝(話題作り)も自分でやらなければいけないのだ。